University College London,PHARMACY MPHARM合格
稲葉ひらりさん(Christ College Brecon高校出身)
・・・・稲葉ひらりさんは日本の中学受験(広尾学園入学)を経験されたあと高校ではイギリスに留学されました。高校卒業後はGAPyearを利用して日本の医学部受験(帰国枠)と薬学部受験(一般入試)を経験、そんなひらりさんが、どのような視点で一会塾を選び、日本の医系大学を受験されたのかについて、また日本の名門薬学部だけでなく、なぜイギリスの名門大学にも合格できたのか・・・多くの帰国枠受験生に待ち受ける貴重な体験、また日英の教育制度の知られざる違いが分かる貴重なインタビューとなりました。ぜひ最後までお読みください~
※University College Londonは世界ランキング上位の常連大学です。最新の大学ランキングは9位(QS)と22位(THE)となっています。表題の第4位(QS)は学部別の最新ランキングとなります。
日本で受験した医学部・薬学部
・順天堂大学 医学部 帰国生枠 2023年 10/17(面接・小論文)10/18(面接)
・北海道大学 医学部 2023年 11/6書類選考通過 11/19 2次面接
・国際医療福祉大 医学部 帰国生特別選抜 2023年11/25
・東京理科大学 薬学部 2024年 2/7(合格)
・慶應義塾大学 薬学部 2024年 2/10
受験したイギリスの薬学部
・University Of Manchester, MPharm Pharmacy 2024年1/17 Online interview(合格)
・UCL, MPharm Pharmacy, 2024年1/22一次学科試験
・UCL, MPharm Pharmacy, 2024年2/28 Online interview → 2024年4/8 合格通知到着 2024年9月入学(予定)
入塾して塾生生活がスタート
数ある予備校の中から、一会塾を選ばれたのはなぜですか?決め手はどこでしたか
母がインターネットで帰国生枠の医学部受験に強い塾を調べていてヒットしたのが一会塾でした。ホームページを拝見して過去の塾生の体験談を読み、私もチャレンジしてみたいと思いました。また、必要な教科を必要な分だけ受講できるところ、そして恵比寿に校舎がある点が魅力的でした。
どんな授業を受講されましたか
2023年の9月に初回数学授業を受け、その後は週一回のペースで11月末ごろまで数学の個別指導を受講していました。また数学の授業の他には山口先生に小論文の添削をしてもらいました。イギリスの高校での数学カリキュラムと日本の高校生が習う数学とを比較すると履修していない単元が複数あるため、先生から貰うプリントや教科書を読んでしっかり予習してから授業に臨む必要があると思いました。それでも内容の濃い授業だったので着いていくのに必死でした。
個別指導以外では一会塾をどのように活用されましたか
独立型ブースの自習室があり集中して勉強しやすかったです。基本的に週一回しか通っていなかったのであまり活用は出来ませんでした。授業時間外の質問もし易く、もっと沢山するべきだったと思います。
知らない単元だと自身の基礎知識が少なかったので質問するのを憚られる時もありました。ただ、志望理由書の書き方などは積極的にアドバイスを下さり添削もして下さったので最終的に満足した物が提出できました。その際、過去の受験者の例を見せてくださったり、フィードバックが早く助かりました。
全体的な感想としては、7月頃から通っていればよかったなと思います。数学を習ってもそれを身に付けるのに時間がかかってしまい、自習時間も思うように取れませんでした。自分の危機感の少なさも関係していたと思います。医学部受験が終わった後、薬学部を一般受験すると決めた後の方が追い詰められて、勉強時間も長くやる気がありました。
これまでの学習履歴について
日本では中学受験を経験されていましたね
四谷大塚に通い(多分4年生頃から)、第一志望は渋渋で広尾学園は親に提案されて受験しました。渋渋は残念な結果でしたが、当時前進的であったIT教育やインターナショナル、医新サイエンスコースがある広尾学園も魅力的だったのでそちらに決めました。
その後高校でイギリス留学を決められた経緯について教えてください
母親から常々留学することを勧められていましたが、新しい環境が少し怖かったのと日本の友達と離れたくなかったこともあって数年間は行きたく無いと思っていました。転機は中3の冬頃やってきました。通っていた英語塾の生徒から留学についての体験談を聞く機会がありました。そこで初めて留学とはどういうものかを知りました。その後、親とも話し合い、機会が与えられているのにチャレンジしないのは勿体無いと感じ新しい環境に身を置いて英語を流暢に話したいと思うようになりました。
なぜイギリスを選ばれたのでしょうか
イギリスにした理由は数点あります。まずはクイーンズイングリッシュ(綺麗な英語)を学びたかったこと、非銃社会で比較的安全であったこと、お勧めされた学校がイギリスにあったことなです。
イギリスでの留学生活の実際
実際に留学されたあとのイギリス国内の治安、物価や食生活に感じたことを教えてください
私が住んでいたBrecon、Walesという地域は田舎だったので身の危険を感じることは一度もなかったです。ただし、夜は街灯が少なく真っ暗になるので出歩くのはお勧めしません。それに比べてロンドンは住んだ事がないので分かりませんが、観光で行く分には差別などもなく普通に過ごせます。私は大学でロンドンに住む予定ですが特に危ないイメージはないです。夜、出歩く時はなるべく友達と一緒にいる事を心掛けますが、、、、安全面で言えば日本は世界一だと思います笑
私が留学した年の2019年は1ポンド130円(2024年5月現在は192円)という今では考えられないほど円高傾向だったので物価はそこまで悪くなかったですが、近年の円安で生活するのは大変だと思います。
食生活について賛否両論ありますが、イギリス料理は味付けをお客個人に任せる文化が強い(塩胡椒、お酢、ケチャップ、グレイビーなど)のでテーブルに置いてある調味料を使わないと薄味に感じると思います。イギリス料理だけではなく、多国籍のレストランがあるので食事に困ることはありませんでした。
面白いなと感じたのは特定の食べ物を好む人が多く、新しい食べ物に挑戦する人が少ない事です。イギリス人はジャガイモをさまざまな方法で調理して提供します。マッシュポテト、ベイクドポテト、フライドポテト等・・・・そして、金曜日はフィッシュアンドチップ、週末はローストディナーの日と決まっている家庭が多いです。実際に休みの期間にホームステイをするとそのような習慣がある家庭がほとんどでした。
イギリスにいた時は寮生活で、3食食堂で提供されたものを食べ、異なる食文化を尊重して、中国料理、日本料理、スペイン料理などテーマが決められている日もありました。私の学校は他のイギリス国内の学校と比べると食に力を入れていたと思います。
イギリスの高校は日本の高校とどう違う
日本の高校とイギリスの高校の違いで特筆すべきことは何でしょうか ~イギリス教育のキーワードは『自立』~
例を上げたらキリがありませんが、勉学面から紹介したいと思います。
<勉学面>
イギリスの教育を一言で表すと“自立”です。
日本には文理選択があり、そこから世界史や日本史を選択する機会があると思います。イギリスのA levelでは自分が選択したい授業を最大4つまで、自分の進路や入りたい大学の学部に合わせて組み合わせる事ができます。つまり、高校生の時点で自分が将来どんな職業につきたいかを大まかに決める必要があるのです。
さらに、大学の学部は日本より細かく分かれているため慎重に選択する必要があります。例えば、私は最終的にMPharm Pharmacy(薬学部)に行くことを決めましたが、この学部に出願するには化学が必須、生物もしくは物理、そして数学をA levelの教科として取る事が大学が提示している条件でした。日本にも同じような選択があると思いますが、イギリスは学部によってこの選択を自由に組み合わせる事ができます。例えば、Artを大学で学びたかったらA levelでArtに加えてPhotography、全く関係のない経済学等を組み合わせる事が出来ます。
ですので、A levelで学ぶ教科を決定する際は、将来の進路、学びたい事に加えて行きたい大学の学部が条件として提示している教科を履修する必要があります。医学部はどこの大学でも化学を履修する事が必須で、その他理系科目は生物か物理、そして数学の3科目が設定されている事が多いです。
以上のようなことから、高校生の段階でやりたい事が決まっている生徒にとっては自分の興味のある事しか学ばなくて良いので勉強をするのが楽しい環境だと思います。一方でやりたい事が決まっていない生徒は履修する教科の組み合わせに苦戦するかもしれません。そんな生徒のために通常高校は、2年間のA levelが始まる際の一学期目に選択した教科が、想像していた内容と違う、難しすぎると感じたら後から変更する事も可能です。ただし、変更後は遅れた分を取り戻すために集中して勉強する必要があります。文理の割合は学年毎に異なりますが、大体文系60%、理系40%のイメージがあります。
寝ている人が圧倒的に少ないイギリスの授業!?
私が行っていた学校の授業時間は一コマ約35分−40分と短かったです。正直日本の学校では授業中の居眠りが多かったです。また周りが寝ているのにつられて寝ても大丈夫という気持ちも生まれやすかったです。
イギリスに行ってからは授業中に寝ている人は一人もいませんでした。私自身も4年間通いましたが眠すぎてうとうとしてしまったのは片手で数えられるくらいです。そのくらい授業の内容が濃く、また短時間で終わるので集中力も持続しやすかったです。先生から問いかけられる機会が多かったので常に先生の話に耳を傾けて、効率よく勉強出来ました。
イギリスで良い成績とるのは大変
イギリスでは成績はどのように評価されますか
成績のつけられ方は2点あります。授業態度と小テストの結果です。
イギリスには日本のように中間、期末テストはなくその代わりに単元毎の小テストがある事が多いです。(教科にもよりますが)授業態度は1〜9、テスト結果は上からA*(Aスター)、A、B、C、U(fail)です。
教科毎に上記2点を加味した成績が学期毎に付けられます。こちらの成績でどのレベルの大学に出願できるかが決まるのでいい結果を出し続け、平均点をキープする事がとても大事であり大変でもありました。
その中で高評価をとるのはどのようにすべきですか
授業態度は基本的に集中して授業に参加し、発言し、宿題を提出して(内容もとても大事)放課後に質問しにいけば高い点は取れると思います。
小テストの出され方について、理系科目は日本と似ています。しかし文系科目は暗記よりかは内容やその出来事の背景を理解したエッセイを書けるかが重要でした。ここが日本と大きく違い、ただ暗記するだけなく自分自身の意見も取り入れなければいけなかったので私は歴史や地理の成績を上げるのに苦労しました。
A level, GCSEってなんですか
先程から出ているA levelという単語は聞いた事がない方が殆どだと思うので説明をしたいと思います。
日本とイギリスの大学に入るまでの合計学習年数は変わりませんが学年の区切り方が異なります。
明確に分けるのは難しいですが日本でいう中3、高1がGCSE(General Certificate for Secondary Education,14-16才)。高2、高3がA level(Advanced Level qualification、16−18才)と呼ばれます。それぞれ2年間あるのですが2年間の勉強の最後にGCSEのテスト、A levelのテストがあります。そのテストの結果によって2年間の最終成績が決まります。それまでどれだけ小テストの結果が良くてもそこで悪い成績を取ってしまったらすべてちゃらになってしまうので最後まで気を抜かずに勉強し続ける必要があります。逆に言えば、それまでどれだけ悪い成績を取っていても最後のテストでいい点数を取れれば一発逆転のチャンスがあるという事です。
日本教育 | イギリス教育 | |
中3 | Year10 | GCSE |
高1 | Year11 | |
GCSE EXAM | ||
高2 | Year12 | Year 12の終わりにAS level
Year 13の終わりにA level |
高3 | Year13 |
日本よりも多様な選択肢がある部活と課外活動
イギリスでの部活、課外活動はどのような感じでしたか
日本でいう部活動という部類は無く、学期(シーズン)ごとに異なるスポーツをプレイします。例えば、ホッケー、クリケット、ネットボールなどです。またラグビーはWales地方で特に人気のスポーツで学校外のチームに入っている生徒が多いです。
課外活動は毎週末土曜日に約10個のアクティビティから選択する事が出来ます。高学年になる程、時間の使い方に自由が生まれるのでその時間を勉強に当ててもいいと思います。私は2年間ほど乗馬を選択しました。自然豊かで緑に囲まれながらの乗馬はとっても楽しく、爽快でした。他にもクッキング、ボルダリング、ラジオクラブ、テニス、ジム、esports(eスポーツ)、バトミントン、ピラティス、ヨガ、クイズ、チェス、老人ホームへのボランティアなど豊富な選択肢がありました。
通常の部活が無い分、この課外活動を通して学年間の交流をしていました。また学期ごとに好きな活動を変更する事が出来ます。沢山の選択肢を提供してくれた学校にとっても感謝しています。
イギリスの高校生の進路、将来への見方は日本の高校生とどのように違うと思いますか
大学行く事が全てでは無いと感じました。土地柄もあるかもしれませんが、大学に行かず親の農場経営を継ぐという生徒もいました。さらに、apprenticeshipといういわゆるインターンに高校卒業後申し込みそのまま資格を得て働く予定の生徒やイギリス軍隊に入隊する生徒など様々な道があります。大学に行かない選択肢を取っても生徒や先生は驚く様子もなく個人の意思を尊重していました。
他にも、GAP yearを取り1年間海外で働きながら生活してみたり自分のやりたい事を探したい!勉強から一旦離れて大学に入る前に楽しく遊びたいという意見もあります。
GAPyear(ギャップイヤー)とは、学生が大学への入学前、在学中、卒業後に就職するまでなどの時期に、留学やインターンシップ、ボランティアなどの社会体験活動を行うため、大学が猶予期間を与える制度。
イギリスで差別や偏見にあったこと
留学中にアジア人に対する差別や偏見などを感じたことはありますか
文化の違いに対する偏見、差別などは私の通っていた学校では無いとは言い切れませんが私自身が感じで傷付いた事は無いです。この話をする上で大事なのはどのレベルの学校に通っていたかだと思います。
イギリスにも日本のように私立、公立と分かれています。ちなみに私はPublic Schoolに通いました。
Public School(パブリック・スクール)とはイングランドでは私立学校を指す(スコットランドでは公立学校を指す)。 私立学校全体はインディペンデンス・スクールと呼ばれるが、その中で歴史・伝統のある、いわゆる名門校がパブリック・スクールと呼ば れるのである。
現地の公立校と比べると学費が高いのでその分学校施設の充実度や教育方針、生徒の品行も良かったです。
もし、公立高校やもっと都会の人が多い地域にいたら差別を感じる瞬間も多かったかもしれません。
私の通った学校は文化交流のしやすい学校だったと思います。月に一回は食堂でその国特有の民族料理が出たり、寮ではtake awayで中華料理を取ったりして毎年中国のlunar new yearを祝っていました。私がいた時は寮母さん企画で寮に泊まっている外国籍の子がその国(ドイツ、スペイン、日本、中国など)の郷土料理を作り、皆で頂く週末もありました。アジア人の数では香港、中国籍の生徒が多く低学年から高学年まで満遍なくいるイメージです。
日本では聞きなれないギャップイヤーとは
GAP yearは日本に無い制度なので、とても興味があります。もう少し具体的に教えていただけますか
Gap yearとはA levelのテストが終わり学校を卒業した後、大学に入る前に生徒が1年間自由な事をできる期間の事をいいます。この期間で例えば将来、獣医や医師になりたい人はオーストラリア、アメリカ、ニュージーランドの農場に行って半年ほど働いたり、知り合いの病院等で医師のお手伝いをします。将来就きたい仕事に必要なスキルや経験を早いうちに直接見聞きして、蓄える事が出来ます。大学側も明確なビジョンを持っている生徒に物事を教えたいのは当然です。なので、経験をして実際にどんな仕事や環境で働く事になるのか深く理解している事をアピールできる人が受験にも有利になります。
Gap yearの期間にゴロゴロするのでは無く、働いたり、旅行に行って有効活用する生徒が殆どです。逆に、高校生の時に進路について相談する時、先生方からもなぜGap yearをとりたいのか聞かれるので理由がないといけませんね。
その中で、稲葉さん進路選択はどのようにされたのでしょうか
私は最終的にGap yearを取る事に決めました。2024/5現在もその期間で今年の9月から大学に進学予定です。最初は合格を貰えると思い(2023/2ごろまで)Gap yearを取る事は考えていませんでした。しかし、イギリスの医学部のハードルは高くどこからも合格を貰えず、その時にGap yearを取る事を決めました。その期間中に日本の医学部を帰国生枠で複数受けました。また、イギリスの薬学部に再度出願もしました。
【(日英との比較における)イギリスの大学受験について】
日本の医学部・薬学部などを受験された動機について教えてください
子供の頃から外科医になって沢山の人を助けその人が笑顔でその後の人生を送れる手助けをしたいと思っていました。イギリスの医学部に落ちても諦められず日本で医学部を受ける事にしました。しかし、その決断をしたのが遅く一会塾に入ったのは9月頃で受験まで少しの期間しかありませんでした。
数学や化学、生物で習っていた内容で違った部分の準備が間に合わず、全て残念な結果に終わりました。A levelの結果が良ければイギリスの医学部に再度出願しましたが自分の成績では少し足りなかったので諦めました、、、(大体どの大学も医学部のグレード要求は高く、全ての教科でA*を取るくらいでないと他の出願者に負けてしまいます)
そこから自分はいったい何になりたいんだろうと将来像が分からなくなりました。ボランティアの経験も病院や老人ホームくらいしか無いので他の分野を考えても想像が付きませんでした。それでも、人々の健康に関わる仕事、コミュニケーションを大事にする仕事をしたいという気持ちは変わらなかったのでその条件を元に魅力的な仕事を探していき薬学部を見つけました。正直薬学部について無知で国家試験を受けて薬局で働く薬剤師になれるというイメージしかなかったので本当に薬学部でいいかなと迷いました。しかし、イギリスの薬学部のカリキュラム、そしてその後の進路の選択肢の豊富さを知った時はとっても楽しそうだなと興味を持つことができました。日本でも薬学部は受けましたが、様々な理由からイギリスの薬学部に行きたい気持ちが強くなっていきました。
日本の入試とイギリスの入試
日本の入試を受けて感じたこと、苦労したことなど教えてください
良い点でもあり悪い点でもあるのは共通テストや大学独自のテストで合否が決まるところだと思います。
面接がある学部もありますが、試験の結果が最重要視される点は日本教育の特徴だと思います。
テストで合否が決まるのは公平かつ、頑張ったらその分だけ結果がついてくるので分かりやすい仕組みだと思います。しかし、勉強は普通でも、その他の分野で特異なスキルを持っている人はそれをアピールできる機会が限られると思います。
そんな日本と比べた場合のイギリスの入試制度は・・・
イギリスでももちろん成績は大事ですがPersonal Statementという志望理由書を全ての学部で書きます。Personal Statementの具体的な内容としては;
・なぜその学部に入りたいか
・その学部に必要なスキルを持ち合わせている証明ができる活動をしたか
・その場合どんな経験をして何を思ったか
・将来その学部に入ったら何を学び、どう活かせるか
・人柄がわかる活動(スポーツ、課外活動、ボランティア、勉強面)は何か
このように勉強面以外でも自分をアピールする機会がたくさんあります。だから海外では、ボランティアや課外活動が大事だと言われ続けているわけです。大学側もただ勉強ができる生徒ではなく、将来やりたい事を理解していて、人に伝える力があり、経験値を持つ人を積極的に採ります。
なるほど、日本の入試制度で稲葉さんが苦労されたことは・・・
私は言うまでもなく数学で一番苦労しました笑。日本の方が数学の内容が難しく習う範囲も広いのでイギリス人がみたら発狂すると思います。日本で高校生がどんな教科書や問題集を使って勉強しているか知らなかったのでスタートダッシュに遅れた気持ちで勉強していました。常にこの勉強法であっているのかなと不安な気持ちでいたと思います。また、同じような境遇の人も少ないため相談するにも出来ず、自分を信じ、日本で受験した幼馴染からアドバイスや問題集を貰ったりしてめげずに頑張りました。
日本の医学部の面接試験で感じたことはありますか
医学部の面接は順天堂大学と北海道大学で経験しましたが、順天堂大学の方がより積極的に沢山質問をして下さいました。過去にあった質問等を把握していたので準備してから臨み、当日はもちろん緊張しましたが質問に答えられないという事はなかったです。個人的な手応えは良かったのですが恐らく私のA levelの結果が他の受験者と比べて見劣りしたのだと思います。
オンラインですべてが完結するイギリスの入学試験とは
稲葉さんは非常にレベルの高いイギリスの大学に2つも合格されました。どのように志望校を選定されましたか?
選定基準は特になく、私の持っている成績で入れるイギリスの薬学部を世界ランキングが高い順に出願しました。
1つ目:University of Manchester
世界ランキング: QS_2024・・・・ 32位、THE_2024 ・・・・51位
所在地: マンチェスターは、豊かな産業遺産を誇るイングランド北西部の主要都市
こちらの大学はイギリスでロンドンに次いで二番目に栄えている都市に所在し、学生からの人気が高い大学です。また、マンチェスターは多様性と音楽、芸術に豊かで美術や音楽が好きな私にとっては魅力的でした。第一志望はUCLでしたが第二志望はこちらの大学だったので合格を貰った時はとても嬉しかったです。
2つ目:UCL(University College London)
世界ランキング:QS_2024 ・・・9位、THE_2024 ・・・22位
所在地:ロンドンの中心地、大英博物館が同じ通りにある
UCLの薬学部はつい先日世界ランキングで4位になりました。UCLはロンドン中心地にありここもまた知らない人はいないでしょう。生徒の割合は外国籍と本国籍が半々くらいです。研究能力や教授の質が良いので高いモチベーションを持つ同級生と一緒に勉強するのが楽しみです。
英の大学を受験する際の必要書類は何ですか
紙の書類は一切必要ありません。
UCASというサイトで一括してイギリス国内の全ての大学に出願する事が出来ます。
必要な情報は様々ありますが、重要視される割合が大きいのは
・A levelやAS levelの成績もしくはPredicted grade(出願する時期はYear13の冬なのでまだA levelの成績が出ていない。そのため先生方がそれまでの小テストの成績や授業態度を踏まえて生徒の最終試験の成績を算出したものを使用する。)
・Personal Statement
・獲得した課外活動等の賞
・仕事、ボランティア経験
・preference (学校の先生からの紹介、生徒の人柄などが書かれると思います。実際には何を書いたか見れないのでわかりません。)
などです。
イギリスの大学の出願の手続きや合格するまでのテスト等について詳しく教えてください
まずは上記をUCASに入力してUCASが設定した期日までに(医学部は他の学部より期日が早い)出願します。全てオンライン上でできるため日本の受験よりも遥かに楽でした笑
大学側が受理して面接がない場合はすぐに合格が出る可能性があります。そのため定員が埋まってしまう前に早めに出願するのが吉とされています。ただし大学によって方針は様々なので最終期日まで待ってから合格を出す大学もありますので注意が必要です。
面接が必要な学部は面接に呼ばれれば第一段階突破です。Manchester大学は面接に呼ばれた翌日にすぐ合格を頂けました。逆にUCLなど世界ランキングが高い大学は面接の他に学校独自の学部試験があるときもあります。オンライン上でのテストであくまでもその人に適性があるかどうかを調べるものですので難しい数学の問題などは聞かれませんでしたが基礎知識に加え、医学部薬学部は特に倫理観や常識が備わっているかどうかを選択問題やエッセイを書かせて吟味します。もちろんこの段階で落ちてしまう可能性も大いにあります。
UCLはこのテストが終わって約一ヶ月後に面接の招待をもらったのでその期間中は不安でした笑
大体面接の招待メールを貰ってから1週間後に面接なのでその期間中やその前からあらかじめ質問予想を作っておいて答えられるように準備を徹底します。私は通っていた英語塾で面接練習をそれぞれの大学用に一回づつ行いました。絶対に緊張すると思うので最低一回は通しでイメージを掴んだ方がいいと思います。
〈イギリスの大学でのオンライン入試面接〉
大学によって形式は様々ですがManchester大学では教授と一対一で予定では約15分ほどの面接を私の場合は8分で終わりました笑
UCLでは面接官が3人いて現役の薬剤師、教授、シニアの生徒が交互に質問を投げかけてきましたこちらの面接は約10分くらいで終了しました。
面接の内容は詳しくお話できませんが私自身ネットで調べながら質問予想をしたのでそれで十分だと思います。
自分がなぜ薬学部を学びたいのか
どんな職業に就きたいのか
薬剤師に必要なスキル
イギリスの医療態勢が抱えている問題点
など必要な情報を挙げたらキリがありませんが全て満遍なく一定程度理解しておけば咄嗟の時に真っ白にならないで喋れます。何を質問されても大丈夫と思えたら100点満点です。
すべてを経験した上で言えること
日本とイギリス、両方の大学受験を通じて感じたことはなんですか
それぞれに厳しさがあると感じました。
個人的意見ですが、日本は受験期間勉強のみに集中して息抜きも十分に取れず、不安を抱えながら勉強する期間が長いなと感じました。イギリスは逆にオールラウンダーにならないとダメなプレッシャーがあり、自ら行動して活動した証拠を増やしていく必要があると感じました。
日本の帰国受験生へ伝えたいこと
今後、帰国生が日本の大学を受ける際の注意点などについてアドバイスをお願いします
・始めるのが遅いと日本のカリキュラムに追いつくための時間が十分に取れないので早めに将来の決断をする。途中で変わったとしても始まるのが早ければ基礎は身につくので損はしないと思う。
・どんな教科書、参考書を解いたら良いか積極的に聞く、調べる。1日でも早く教材が揃った状態で勉強できた方が勉強法についての不安が少なくなる。
・イギリスから日本に卒業証明書や成績証明書を送ってもらうのが1週間程度かかるので、まずは出願要項を見て必要書類を早めに揃える。
・日本の小論文の練習を沢山する。
・英語は特に心配する点はないと思いましたが、慶應の英語は文章量も多く単語も難しいので過去問は絶対解いたほいがいいと思いました。
・日本の受験をして落ちてしまった場合の次の選択肢を考えておく。
などです。
合格した瞬間のことを覚えていますか
本当にびっくりして叫びました。とっっっても嬉しかったです。沢山の人に応援して頂いていたので期待に応えられて良かったと心の底からホッとしました。今は9月から始まる授業に備えて薬の名前でも勉強しようかなーと考えています笑 とにかく知識を失わないようにしたいです。
今回の合格は何かポイントだったとご自分でお考えですか
Personal Statementの出来と面接の受け答えが良かったことだと思います。面接は準備した分報われるなと思います。どの問題にもスムーズに応えられた自信があります。
1年(約9か月)を振り返って感じたことは・・・
2023年8月後半に日本でも医学部を受験すると決めて結果は薬学部進学となりましたが、あの時諦めず頑張って勉強して良かったなと本当に思います。日本で受験することを諦めていたらこの辛さとその先にあるもっと強い幸福感を味わえなかったです。受験期間を通してとっても有意義に時間を過ごせたと思っています。
最後にこれから受験する人へのアドバイスをお願いします
受験期間中はなんで自分だけこんな辛いんだろう、あの時もっと頑張っておけば良かったと思うかもしれません。私もそう思った時は何回もありました。ですが、嫌でも、不安でも、ヤケクソになっても勉強し続けていれば結果はついてくると感じました。面接などがある場合はその準備に妥協しない事が大事だと思います。何事もこのくらいで大丈夫だろう・・・はないのでギリギリまで勉強、準備に時間を使えたら理想的ですね。自分を変える事を出来るのは自分の行動のみです、最後まで頑張って下さい!受かった瞬間の喜びほど気持ち良いものはありませんから。
~追加インタビュー~
イギリスで薬剤師になるということ
イギリスの薬剤師と日本の薬剤師の違いにはついてどう感じていますか
日本とイギリスでは薬剤師の社会的立場が違うと思います。
日本は病気になったらまずはかかりつけ医に行き、その後に薬局に行ってお薬をもらうと思います。
イギリスではかかりつけ医の予約をすることが難しく、待ち時間も長いため風邪をひいたり怪我をしたらまずは薬局に行き、診てもらって指示を仰ぎます。病院に行かなくても大丈夫であればその場で市販されている薬をお勧めしてくれます。
このようにイギリスでは薬局がコミュニティーの顔となり地元住民の健康を支えています。
イギリスの薬剤師にできることをもう少し具体的に教えてください
大きな特色はイギリスではindependent prescriber、薬剤師の権限で独立処方ができる点です。
日本では薬剤師は医師からの処方箋をもとに薬を調合して患者様に処方しますが、イギリスでは医師からの処方箋無しに薬剤師自らが患者さんの容態を見て薬を処方できます。この体制は従来からありましたが独立処方権限を得るには追加のトレーニングが必要でした。しかし、2026年卒の学生はこのトレーニング無しでも卒業することで自動的に権限が付与されます。その分、従来のカリキュラムに臨床や診断スキルを養う授業が加わりました。
イギリスの薬学部は6年生ですか
イギリスの薬学部は4年生で卒業後は1年間薬局や病院で薬剤師として研修をし、その後国家試験を受けることにより資格を持った薬剤師になれます。