後藤晴香さん
日本大学 生物資源科学部 獣医学科
田園調布学園高校
”実習、動物園巡り、水族館でのアルバイト、海外ツアーに学会と、多忙な大学生活を楽しんでいます。今の経験や人との出会い、繋がりを糧にして、将来は自分の動物病院を開業したいです”
インタビュアー : 山口(英語科スタッフ)
”毎回、会うたびにいろんな経験話をしてくれる後藤晴香さん、また塾生の獣医合格のために卒業後も何度も一会塾に来てくれました。会う人すべてにプラスの影響を与える晴香さん、このインタビューでもすごく実感したところです。途中、晴香さんが実際に撮影した生の動物の写真が多数出てきます。好きな人にはたまらないですね。”
※途中で実際の解剖実習の話が出て参ります。苦手な方は、ご注意ください。
(山口) まず小学生の頃のことを聞きたいんですけど、中学受験をするまで、どんな子供で、いつからどこの塾に通って、どんなふうに中学入試を受けたか。
(後藤) 物心がついた時から、生き物が好きでした。動物や植物、自然に結構興味がありました。獣医になりたいと思ったのは小学校5年生とか6年生ぐらいからで。
(山口) 早いね。その頃にもう獣医という職業は知っていたの。
(後藤) 『獣医ドリトル』というドラマを見て。あとは田園調布に田向先生という有名な先生がいらっしゃるんですけど、その方が『情熱大陸』で取り上げられていて、すごいなと思って。
(山口) 田園調布動物病院の田向先生。
(後藤) そうです。カメでもウーパールーパーでも手術をするし、何でも治すみたいな、それがすごくかっこよくて、獣医さんっていいなと。中学受験は、たぶん塾自体は1年間くらいしか通っていないです。6年生になる前の春休みから1年間、川崎の進学院という塾に。小さい塾だったんですけど、母がそういうところが好きで。ここもそうですけど、大手とは違って、ちゃんと一人一人のことを見てくれるみたいな。
(山口) 一会塾は、お母さんが検索で探してくれたんだっけ。
(後藤) そうです。そしたら友達も通っていて、場所も学校からすぐで良かったし。
(山口) そんなにがつがつ勉強することなく、中学に入ったんですね。
(後藤) 勉強はしていましたけど、苦しかった覚えは全く無く、塾も楽しかったです。
(山口) 小学生の塾は楽しかった?
(後藤) 友達もいっぱいいたし、そんなにがつがつはやっていなくて。なので、香蘭とか洗足も受けていますけど、田園調布と何個かは受かったという感じです。
(山口) 田園調布学園に入って、どうでしたか。
(後藤) 中高一貫の女子高なんですけど、決まりとかがすごく厳しくて、結構縛られていましたね。
(山口) 課題も多く。
(後藤) すごく宿題は多いですね。言われたことをやれば力が付くようなプログラムにはなっているんだなと、今思えば。
(山口) 学校は楽しかったですか。
(後藤) 楽しかったですね。
(山口) 部活もしていたんですか。
(後藤) 部活は硬式テニスをやっていました、ずっと。一応都大会にも出ました。
(山口) すごいね。中学に入ってからは、塾は。
(後藤) 行っていないですね。
(山口) 高校に上がって、好きな科目、嫌いな科目とかってありました?
(後藤) 好きな科目は生物。嫌いな科目は英語。
(山口) 何で英語が嫌いなの。
(後藤) あんまり楽しいと思わなかったし、文法とか全然覚えられなかったし、覚えたいともあんまり思わなかったんです(笑)
(山口) それに比べて数学の方が好きだった。
(後藤) そうです。数学とかは、好きかどうかは分からないけど、得意でした。
(山口) じゃあ、リケジョだね。
(後藤) もうずっと前から思い切り理系でした。
(山口) 高2の春に、日本農業実践学園の短期農業体験に参加したと聞きましたが。
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(後藤) はい。母に勧められて、自分でも調べてみて、行ってみようと思って。初めて酪農のことを体験したんですけど、朝4時とかに起きて、お世話をして、すごく大変さを感じました。それは全然獣医とか関係なくて、酪農の体験。参加者はだいたい内部学生で、たまに外部から受け入れをしているみたいな感じでした。弟と一緒に行ったんですけど、弟は3日間ぐらいで、私は1週間ぐらいいて、本当に大変でした。
↑カササギサイチョウ
立派な嘴の先にエサをくわえています。(2018.2 マレーシア ボルネオ島)
(山口) それでもう、やめようって思わなかったの。
(後藤) 動物を相手にするって、こういうことなんだなと思って。
(山口) 貴重な体験だったんだ。
(後藤) 楽しかったです。生産の一番初めの段階を見たりできて。そこにアイスクリームを作るところとかもあるんですけど、1次、2次、3次工程みたいなものを全部見られて、自分がスーパーで買うものが、こうやってできているんだな!みたいな。
↑トビトカゲ
お腹にマントのようなものがあり滑空することができます。木の色に上手く擬態してます。(2018.2 マレーシア ボルネオ島)
(山口) カルチャーショック、プラス楽しさと大変さを学んだと。それが高2の春で、高2の夏か冬ぐらいに一会塾に来たんだっけ?
(後藤) 夏ですかね。そこから1年ちょいぐらい。
(山口) 少し塾の話なんですけど、どんな印象ですか、一会塾。
(後藤) やっぱり、ちゃんと生徒のことを見てくれるなと思いましたね。一人一人を大切にしてくれるし、しかも全然教わっていない先生とも話せたり、教えてくれたりして、すごくありがたかったです。
(山口) 数学の先生も、国語の先生ともよく話していたね。
アットホームな感じだったですかね。小さかったし。
(後藤) 全然習っていなかったけど、普通にテキストとか問題集をもらって、申し訳ないなと思いながら(笑)
(山口) 高3の時は公募を意識していた、受けるつもりでいた?
(後藤) もともと国立の岩手大学を狙っていました。
(山口) なぜ岩手を?
(後藤) 全然学費が違うじゃないですか。学費は私立と国立は。
(山口) 引っ越して通うつもりで岩手を目指していたんだ。
(後藤) 家から近い国立大学が、まず東大と農工しかなくて、まさかの数Ⅲまで必要なので、そこから。それから次に広げていくと、岩手なんです。岩手まで全然無いんですよ、獣医の国立大学って。
(山口) 地図上で上に行けばね。
(後藤) 西なら岐阜が近いかな。だけどやっぱり新幹線とか考えると盛岡が一番便利で。だから夏休みとかオープンキャンパスに行きましたよ、岩手まで1人で。
(山口) 志望が本物だということが分かるね、岩手まで行くと。どんな印象でした。
(後藤) いい大学ですね。結構施設も新しいものが建っていて、これから使う大きい施設を案内してもらって。
(山口) じゃあ、5教科受けるつもりだったの。
(後藤) センターでは。確か2次が自分に向いている方式だったんですよ。何個かあって2つ自由に選べる。たぶん生物と数学を選択できて、英語を使わない方式があって、自分に一番有利な受け方ができるなと。
↑ハチクイ
その名の通りハチなどの昆虫などを食べる鳥です。(2019.2 アメリカ)
(山口) じゃあ、両立てで勉強をしていて日大の公募があって、それ以外は受けていない。
(後藤) 公募で受かると、もう入学しないといけないので、受けられないから受けていないです。センターは受けに行きました。お金を払っていたから。
(山口) 公募の時期は11月初旬ぐらいだったかな。
(後藤) そうですね。11月11日とかだったかな。
(山口) じゃあ、推薦入試に向けて、狙いは定まっていたんですか。夏ぐらいからは。
↑太平洋水族館にはホエールウォッチングつきのチケットがあり人生初の野生のイルカとクジラを見れました。
(後藤) 夏ぐらいから、もう獣医はレベルが高すぎて、とにかく現役で受かりたいなと思って。
(山口) 夏にオープンキャンパスに行って、過去問を仕入れたりしていたでしょう。
(後藤) そうですね。日大はオープンキャンパスに行けなくて、その後に自分で行って、そしたらそこで面白い出来事があって。学校の敷地内のちょっと離れたところにANMECという大学付属の動物病院があって、その前を歩いていたら、知らないおじさんに話しかけられて。最初警戒したんですけど、よく聞いたらそのANMECで働いている獣医さんで。
(山口) 何しに来たのみたいな。
(後藤) たぶん受験生って分かったんですかね。その前で一人ふらふら中の様子を伺っていたんで。それで、中を全部案内してくれたんです。色々な検査室とか、入院しているところとか。
(山口) すごいね。知らない人に話しかけられたと思ったら、教授?先生?
(後藤) 教授です。授業も教えていて、ANMECでも働いている皮膚科の先生で、結構有名なんですよ。それで入試本番、なんとその人が面接官でしたね(笑)。
(山口) 持っていますね。
(後藤) 向こうも覚えていて、あの時のみたいになって、結構話に花が咲きました。面接は5ブースあって、それぞれ教授3人、受験生1人で行われていて、直前までどこに振り分けられるか分からないのに。
(山口) すごい話だね。それで高校の秋で決まったので、もう冬以降は受験勉強をしなくてよかった。ところで大学に入って現在まで、どんな生活ですか。獣医学科自体は楽しいですか。大学の特徴とか教えてもらえますか。
↑コクレルシファカ ロサンゼルス動物園
マダガスカルに生息するキツネザルの仲間。日本の動物園では見ることができない珍しい動物です。
(後藤) 大学の特徴は、やっぱり獣医学科内での結び付きが強い、縦とも横とも。逆に他の学科と全然絡まないんです。授業がほぼ固定なので、みんな受けるものが決まっていて、1年生の時は若干教養科目はあるんですけど、それも先輩から聞いた情報でみんな受けるので。
(山口) 生物資源科学部自体が巨大な学部ですよね。
(後藤) 13学科あります。
(山口) 200~300人いるのかな。
(後藤) もっといます。1学年獣医で130~140人いるので、かける13学科、かける4学年。
(山口) めちゃくちゃ大きいね。
(後藤) 院まであるので何千といますよ、あの校舎に。
(山口) 巨大な1つの大学といってもいいぐらいの規模だね、生物資源科学部だけで。
獣医学科も130人ぐらいいて、いろいろなところから来ていますか。
↑ジェレヌク サンディエゴ動物園
首の長いアンテロープの一種(ウシの仲間)。写真のように立って木の葉っぱを食べます。日本の動物園では見られません。
(後藤) そうですね、本当に日本全国色々なところから来ています。獣医は実家から通っている人は少なくて、首都圏の人で1・2年生の時に通っていた人でも、途中で引っ越すみたいな。実習とかで忙しくて通学に時間をかけられなくなるので。
(山口) 地方には獣医学科が比較的あると思うんですよ。農場が多いから。
それでも上京して私立に通ってまでという人も、いっぱいいると。
(後藤) 国立は多いですね。ただ私立は関東と北海道、あとは四国にしかなくて。国立は定員30人ぐらいじゃないですか。だからなのかな。
(山口) 獣医を目指している人の性格的な特徴とか、家系的な特徴とか、何か思い当たりるところはありますか。周りを見ていて。
(後藤) 日大は、後継子女といって親が獣医という入試の枠があるので、結構多いですね、親が獣医で3代目とか。
(山口) 地方の子も多い。
(後藤) 結構います。
(山口) その枠というのは、推薦入試のことですか。
(後藤) そうです。日大はすごく推薦の種類があって、私が受けた公募推薦、親が獣医とかの後継子女、あとは日統一みたいな日大から日大という。4種類の入試方法の内、3種類が推薦なので、日大は推薦の割合が大きいですね。
オスは立派なテングのような鼻が特徴です。リバークルーズ中に発見。(2018.2 マレーシア ボルネオ島)
(山口) 親が獣医さんじゃない人も、いっぱいいるんでしょう。
(後藤) もちろんいます。そっちの方が多いです。
(山口) みんな動物が好きなんですか。
(後藤) 動物は好きだけど、犬猫だけとか、虫とかは無理っていう人は沢山いますよ。
(山口) 小動物臨床への憧れはやはり強いのですね?
(後藤) 犬猫が好きという人はいますね。
(山口) 爬虫類とか珍しい系統が好きな人もいるんですか。
(後藤) 勿論います。いっぱい色々飼っている人もいます。私はオールマイティーで虫も好きだし魚も、何でも大丈夫なんですよ。ボルネオとかに行っちゃうぐらいですから。
(山口) じゃあ、水族館、その他アルバイトの話を聞いてもいいですか。
(後藤) アルバイトは今、アクアパーク品川という水族館のイルカショーのところにある売店で働いています。仕事の前後とかに館内を見て回ることができるので、いいなと思って。本当は飼育がやりたかったんですけど、時間的に無理で。少しでも関われればいいかなと。
(山口) 学校が終わって、家を通り越して品川まで行って。
(後藤) 土日と長期休みしか入れない、忙しすぎて。
(山口) じゃあ、普段は学校にへばりついているんですね。
忙しい構成は、どんな感じで忙しいんですか。
(後藤) 通学に片道1時間以上かかりますし、授業と実習が忙しくて。実習の日は夕方、早くて6時とか、普通に7時ぐらいまでかかる実習もあるし。
(山口) 実習って何をやっているんですか。
(後藤) 解剖実習とか薬理実習とか、あとは微生物の実習とか色々。
(山口) 薬剤を使ったり。
(後藤) マウスに色々な薬を投与して、その効果を観察します。解剖実習は牛、馬、犬を解剖しました。解剖実習というのは正常を見る実習なので、病気とかではない正常な固体を解剖して、正常を知るという実習で、学年が上がると、この間前期であったんですけど、病理解剖実習というのがあって、病気の固体を解剖して、この子がどういう病気だったかというのを推測するみたいなものです。
(山口) それはマウスなんですか。
(後藤) 豚、牛、ニワトリでした。豚は2体ぐらい。
(山口) 解剖するんですか、後藤さんが。
(後藤) 解剖します、どんどん。どんどん開けていって、肺がおかしいだの、色々臓器を見て。授業でも習っているので、習ったことを踏まえて、この子はどういう病気だというのを、みんなでその範囲でリポートを作って提出するという感じです。
(山口) すごく嫌がる子もいる。
(後藤) それは解剖実習の中で慣れちゃいますね。いいのか悪いのか分からないんですけど、1回ずつ感情を持っていたらやっていけないので。
(山口) それはそうだね。後藤さんもちょっと抵抗はあったんでしょう。
(後藤) ありましたね、初めは。
(山口) だって犬猫が好きで助けたいという気持ちで来たら。
(後藤) 死んだ固体がいて、ああってなって。本当に生きた固体と触れ合うのは全然ないです。
(山口) また話が変わりますが、外国とか行ったんですって?
(後藤) そうですね。今まで行ったのはボルネオ、マレーシア。ボルネオという世界で3番目に大きい島があるんですけど、そこは生物の多様性がすごくて。そこのマレーシア領に10日間ぐらいいて野生動物を観察するツアー。ボルネオ島の環境問題とか、結構日本が関係していて。色々学べたし、すごく沢山野生動物を見れました。楽しかったです。朝はリバークルーズ、タワークルーズをして、昼は森の中を歩いたり、夜もナイトクルーズをしたり、ナイトウォークみたいなことをしたり、野生動物の塾みたいな感じでした。
↑カニクイザル
リバークルーズ中に群れでいるのを発見しました。(2018.2 マレーシア ボルネオ島)
(山口) どういうメンバーで行かれたんですか。
(後藤) 野生動物医学会という学会があって、それで毎年情報が回ってきて、結構先輩も誰かしら毎年行っていて根強い人気がありましたね。私が行った時は北海道の子が2人、日大から4人、東京農業大学から1人、山口大学から4人という構成で、みんな学生で。
(山口) 獣医志望とも限らないか。
(後藤) 獣医は多かったですけど、動物・植物系の人。
(山口) めっちゃ話は合うの。
(後藤) そうですね。ボルネオに来るという時点で、動物とか生き物が好きなので、熱い話ができて、日本では見られないものが沢山いるので、それを見つけた時もみんなで喜んで、みんなで写真を撮ったり。
(山口) 何か危険についての注意事項とかあるんですか。
(後藤) リバークルーズしているところに、普通にワニがいっぱいいます。だから手を出したらだめです。私はヒルに初めて血を吸われました。ヒルは病気を媒介しないらしくて、ただ栄養として血を吸うだけなんですけど、全然血が止まらないんです。血液凝固を阻止する液体を持っていて、本当に全然3日間ぐらい止まらなくて、だらだら出るというより、ちょっとずつ出る。全然かさぶたができないんですよ。
(山口) 怖い!!
(後藤) 怖いですよ。ちょっと嬉しかったけど。
(山口) 何でうれしいの。
(後藤) 初めてじゃないですか。日本でもいますけど。
(山口) 虫よけスプレーは、いっぱい持っていったの。
(後藤) 虫よけは、あんまりしなかったですね。あんまり虫によくない、生き物を見に行っているから。
(山口) 日本がボルネオの環境問題に関係しているというのはどういうことなんですか?
(後藤) 化粧品とか食べ物とかに使われるパーム油は、日本はだいたいボルネオ島から輸入していて、そのパームヤシを育てるには森林を伐採して、そこに住んでいるオランウータンとか、色々な野生動物を殺したり移動させたりしてしているんです。しかも植えている場所って、何年か経ったらもう使えない土地になるんですよ。栄養をどんどん吸うので。回復までにすごく時間がかかるから、荒地みたいな感じになって、野生動物が住めるような地域を減らしてしまっているんです。日本人はそんなに意識していないけど、日々食べているものは、ほとんどのものに入っているんですよ。だいたい植物油脂と書いているんですけど。
(山口) 大量に必要になるんだね、人間が生きていくために。
(後藤) そうなんです。化粧品にも入っているし、チョコにも入っているし、カップラーメンとか。油を使っているものには、ほとんど入っていて。
(山口) そんなのすぐに涸渇しそうだよね。
(後藤) そうなんですよ。なたね油とか色々あるのに、なぜパーム油がいいかというと、時間、量、価格すべてにおいて一番効率がいいのがパーム油なんです。そういうわけで、日本は間接的にボルネオの環境問題に関係があるんです。
(山口) お金をかけても違う油を使ったり、代替するものを探したり、本当はしないといけない。
(後藤) そうなんです。シャンプーとかにも入っているんですよね。最近日本でも、そういう会社に買い取られる前に土地を買う、野生動物がいる地域を先に買って、商業目的の会社に取られないようにするという行動を起こしている団体もあって、そういう団体が主催しているツアーに行ったんです。スタディツアーと言います。
(山口) なるほど、スタディツアー。
(後藤) パーム油の工場も行きましたし、いっぱい生えているところにも行ったし。
(山口) なぜそういうことをしているかとか聞かされるし、すごく切実感を持って理解できるわけですね。
(後藤) そうなんです。ちゃんと野生動物も見たし、すごく考えさせられることが沢山あって、行ってよかったです。
あと、この間の春休みはアメリカに行って、ロサンゼルスとかサンディエゴの動物園、水族館を見てきました。日本の動物園の飼育員さんとか、獣医さんと一緒に行きました。そういうツアーがあるよって、お誘いをいただいて。動物園、水族館と博物館とかを見に行くツアーで。やっぱり日本とは全然違いました。土地もお金もあるし、あとは文化的な問題とか志向の問題もあって。
(山口) スケールが大きいとか。
(後藤) お金のかけ方も、あっちはすごい寄付文化が根付いているんですよ。しかも額も、どーんとあるので、やっぱりお金があるとできることが多いですね。
(山口) 東京は土地も高いし、何をするにもかかるから、やってもしれている規模しかできないもんね。そんなにぼーんって寄付する人もアメリカのようにはいないしね。
(後藤) 大富豪で、しかも自然に関心の高い人がアメリカには多いらしくて。
(山口) ビル・ゲイツとか資産が世界一になった頃から、もうケタ違いに財団を作って、あちこちに寄付しているから、そういう発想の文化があるんだろうね。
(後藤) 考え方も、ちょっと違うしなって。
(山口) ロサンゼルス、サンディエゴで、お勧めの動物園は。
(後藤) サンディエゴ動物園とロサンゼルス動物園が、すごく良かったです。特にロサンゼルスは大きくて、1日じゃ回れない。大きな2階建てのバスに乗って回るツアーがあって。
(山口) 子供は大喜びかもね。
(後藤) 本当にそうです。やっぱり日本では見られない動物も展示していたり、日本だと檻に入っているイメージですけど、あっちでは、本当に自然を意識した作りになっていて、檻はほとんど無く、手前に池を作ってこちら側にやって来られないようにしているというような工夫がされています。日本だったら大体サルはサル、キリンはキリンみたいな感じで、その種ごとにしかいないじゃないですか。日本でもちょっとやっている園もあるんですけど、色々な動物が一緒にいるんですよ。生息地が一緒だったり、鳥と何かが一緒にいるみたいな。
(山口) そういう活動を含め、かなり充実した大学生活を送っていますね。
(後藤) 野生動物医学会という学会にも3年連続参加していて、この間も山口県で3日間行われたんですけど、動物園・水族館で働いている獣医師とか飼育員さんとか、研究者が一気に何百人と集まるんですよ。そこで結構繋がりができたり。
(山口) その学会は、年に1回。
(後藤) 年に1回夏に。場所は毎年変わります。
(山口) それ、資金がすごく大変だね。宿泊から。
(後藤) そうですね。私は今回一緒にボルネオに行った友達が山口県にいたので、その子の家に泊めてもらって。どうせ山口県に行くなら何かしたいと思って、1週間動物病院の実習を入れて。
(山口) 計画的に。休みのたびに、すごく楽しんでいる感じだね。
(後藤) そうですね。絶対どこかには行っています。
(山口) 今度4年生になるんだよね。国家試験が近づいてきて、またちょっと生活が変わるかもしれないですね。
(後藤) 6年間だから、まだですけど。4年から5年に上がる時に仮試験みたいなものはあります。実技と学力の2種類あって、それに受からないと進めないです。スチューデントドクターというのを取らないと実習に参加できない。結構注射を打ったりするので。
(山口) 仮免許みたいなやつ。
(後藤) そういう感じです。
(山口) 国試の対策というのは、何年から本格的にやるんですか。
(後藤) 6年生、卒業論文を書き終わってからです。
(山口) 卒業生はかなりの確率で合格しているんですか。
(後藤) そうですね。9割ぐらい。
(山口) それに対する不安は、あんまりないですか。
(後藤) うーん、分からないけど、6年間のものとなると、やばい。もう莫大。でもやるしかない。
(山口) その後の構想って、何かあるの。
(後藤) 私は最終的には開業したいです。自分の病院を持ちたいので。でも動物園とか水族館も好きで、機会があれば1回動物園の獣医師とかやりたいなとも思うんですけど、最終的なゴールは自分の病院を持つことです。
(山口) それはいわゆる犬猫病院。
(後藤) ちょっとエキゾチックアニマルとかも、少しできたらなって。
(山口) 大人気になりそうだね。今の経験が生かされて、僕としては、小学生対象のセミナーとかをやってくれるような獣医さんになってほしいな。色々な話をしてくれる。
(後藤) 学生のうちに色々経験しようと思って、かなりアクティブに動いています。
(山口) ちゃんとそういう指向性があるから、活発になっているんだね、きっと。
(後藤) 動物園とか年間40~50カ所巡っていて、割れば週に1回ペースになっていて。全部制覇したいです。日本は取りあえずしたいです。本当にいっぱいあるんですよ。小さいところから大きいところまで。
(山口) 同じところに何回も行ったりするの。
(後藤) 年パスを持っているところもあります。近くは年パスを持っていて、何かが生まれましたとか、何か新しい動物が来ましたといったら、見に行きます。もう本当に、バイトをしているか動物園に行っているか実習しているかみたいな。ほとんど家にいないんです。夏休みも全然家にいない。
(山口) 一般的な大学生じゃないね、それ。勉強、趣味、実績を兼ねているんだね。
(後藤) 勉強はあんまりしていないです。
(山口) フィールドワークが多い。
(後藤) やばい、勉強忘れていたみたいな。本当に楽しんでいます。学校というより、どちらかというと外部で楽しんでいるかもしれないです。
(山口) ネットワークとか、友達の友達と、また知り合ったりとか。
(後藤) 学会とかで会ったりする人、動物園・水族館で働いている人がいるので、今度行きますよといったら行ったときに案内してくれたり、一般公開していない場所を見せてくれたりするんですよね。
(山口) 紹介する方も、価値が分かる人に紹介したいと思うからね。
(後藤) どうですかね。でも、自分がもし将来そうなったら、後輩とか興味ある子には来てほしいですね。ちょっと見てほしいなと思いますね、逆の立場だったら。それを今してもらっているのかなと思って。
(山口) 次の世代に恩返しですね。今日は長い時間、ありがとうございました。
(後藤) こちらこそありがとうございました。