一会塾では、毎年、医学部の帰国枠推薦入試に力を入れてきましたが、昨年の正規合格2名につづき、今年も2名の正規合格を出すことができました。まことにおめでとうございます。
4名とも、一会塾の順天堂大・医学部対策を受講された生徒さんです。
帰国生が選ぶ私大医学部入試では、国際医療福祉大医学部と並び、順天堂医学部は年々人気が高まっています。
過去3年間の志願者数と出題内容を比較すると
24名→38名→64名(順天堂医学部 帰国枠 定員は4名)10月に2日連続実施(初日 小論文・写真感想文問題と25行の自由英作文、2日目は面接30分)
49名→66名→60名(国際医療福祉大医学部 帰国枠 定員は若干名) 9月と11月の2回実施 独自試験(主要4教科を英語で出題)2次は面接30分×2回
となります。
順天堂大の場合はIBの点数やその他条件をクリアした人は、学科試験が免除されます。免除されない場合は、日本留学試験や共通テストを受けて合否が決まります。
国際医療福祉大の場合は、学科試験を統一で受けて(1次)、2次は面接なので、ミニ受験勉強を求められますが、IBの点数などにほぼ関係なく受験できるのが特徴です。
今年の順天堂の1次試験(小論文120分)では、
「アフガニスタンの難民キャンプの子どの写真」を見て、写真を見て感じたことを書くというものでした。国際医療福祉大の第1回試験では、「ロシアのウクライナ侵攻」が出題されており、コロナから続き、時事的な素材を聞くというの最近の医学部小論文の新常識になろうとしています。
今回の順天堂大の試験日は10/17(火)でした。 ガザ地区を支配しているハマスによってイスラエルに攻撃が行われたのは10/7の早朝でした。
医学部面接の質問あるあるは、「最近、気になるニュースを教えてください。」ですが、まさにこれを小論文で聞いてきているといった出題でした。
2023年実施 順天堂大 医学部 小論文問題 出典:「僕が見たアアフガニスタン Afghan Blue」(久保田弘信著)
問題「この写真は、ナッサルバール難民キャンプでアフガニスタンの少年を撮影したものである。この少年にとって学ぶことはどのような意味があるのか。この少年の言葉で600字以内で書きなさい。」
一会塾で対策を行った人には、写真分析問題は平均して、4回分は書いて添削しています。
こちらの最新問題の分析については、毎年2日目の面接で内容について質問されるために、入試当日の夜に、メールで今回の「小論文」の狙いをお送りして面接に備えていただいています。今回は特別にこちらに公開させていただきます。
年明けに順天堂の医学部一般入試を受ける人にも参考になるはずですので、みなさんも考えてみてください。
一会塾 小論文講師 原田広幸先生による分析(試験当日、受験生に配布)
写真集『僕が見たアフガニスタン』という出典が明らかであり、
また、「この(アフガニスタンの)少年にとって」という指定があることから、アフガニスタンという国についての
最低限の教養というか、一般常識的な情報は、
押さえておく必要があると思う。
つまり、アフガニスタンはイスラム教の内陸国で、
近年は、アフガニスタン紛争による混乱、
駐留米軍撤退後は、イスラム教原理主義
復古主義的なタリバーンが実効支配している。
現政府は、女性の人権が著しく制限されているなど、
国際的に批判を受けているが、
今回は、「少年」に焦点があてられているので、
アフガニスタンの政情不安、国際的孤立、
歴史的・政治的に起因する貧困、それゆえの教育の遅れ、
などが踏まえられていればよい。
また、医師でアフガニスタンの復興に個人として貢献した
日本人の中村哲氏の存在も知っていなければならない。
(ただし、必ずしも中村哲氏に言及する必要はない)
写真の具体的な像が(検索しても)はっきり出てこないので、
受験生の報告によって判断する限りとはなるが、
書くべきことを考えてみる。
まず、
・「この少年にとって」
・「学ぶことの意味」
・「この少年の言葉にして」
という条件があるので、これをしっかり踏まえる。
この出題の趣旨について。
学ぶことの意味だけを書くのではなく、
「この少年にとって」「この少年の言葉にして」
あくまで、少年を主体・主語にして考えるということ。
他者への想像力、共感力をみるための出題だとみるべき。
そうすると、一般的な「学ぶ意味」ではなく
(あるいはそれに加えて)
この少年が学ぶ意味をこたえなければならない。
そうすると、彼に課せられた条件(上記の一般常識を踏まえ)と
彼が学んで将来できること、をなるべく具体的に想像・構想できるか、
が、他の受験生の解答と差別化ポイントになる。
宗教原理主義の最貧国で、
資源もない、仕事も少ない、産業もなく、
国の未来もそれほど明るくない、そんな状況で、
彼が学ぶ意味は何か。
つまり、一般的な意味での教育の結果が、
必ずしも、経済的な豊かさを意味しない環境で、
彼が学ぶことの意味を考えなければならない。
国語ができれば、本が読めるようになる。
将来は、外国語も学ぶことができるようになるかもしれない。
こうして、少しずつ、自分の周囲の自然や社会が
どのようなものかを客観的に見ることができるようになる。
そして、そこから、自分が(少年が)どのように生きるべきか、
主体的に(つまりイスラム教を相対化して)考えること、
選び取ることができるようなる。
自分の社会を変える政治に参画する、中村哲氏のように
知識と技術で祖国の農工業を改善することに尽力する、
外国に留学し、知識を持ち帰る、あるいは、もっと自由に生きる。
結局、最終的には、教育の一般的な意味に近づくわけだけれども、
そこに至るまでの「少年にとって」の学びの意味を上記の例のように
書ければ、合格点がもらえるだろう。
あくまで問いは、少年にとっての学ぶことの意味は?というもの
だから、それに直接的に、具体的に答えるようにしたい。
いかがでしょうか?
先生もおっしゃっている通り、アフガニスタンで死亡された医師 中村哲さんのことがもし、思い浮かべば、小論文はとても書きやすかったのではないでしょうか?
また、アフガニスタンの状況についての知識もないよりはあった方が良かったと思われます。
「米国は、2001年9月に発生した同時多発テロ事件を受けて同年10月にアフガニスタンに侵攻を開始して以来、20年にわたり軍を駐留させてきた。バイデン大統領は2021年4月14日、トランプ前政権が2020年2月にタリバンと交わした米軍の完全撤退を含む和平合意に基づき、アフガニスタンからの最終的な米軍撤退を2021年5月1日から開始し、9月11日までに完了した。」