田中俊樹さん
都内名門私立医科大学 医学部
同僚の死をきっかけに目指し始めた医学部。仕事を辞めての再受験は家族の協力や難題も。講師の方から、医学部に合格するために必要最低限の問題を出してもらい、それを繰り返し繰り返し行いました。40歳医大生が誕生するまでのストーリーとは?
インタビュアー:関
”この体験記には、社会人ならではの効率的な勉強法がたくさん詰まっています。ぜひ一般の受験生も熟読してもらいたいですね”
(関) 田中さんの場合は再受験という形で、なかなか覚悟も今の学生とは全く異なる形で受験に臨まれたかと思うんですけれども、お仕事を辞めて再度受験をするに至ったきっかけを、教えていただけますか。
(田中) きっかけは前々職なんですけれども、同僚が亡くなったことです。その直後からすぐに医学部というふうに思ったわけではないんですけれども、その同僚の死を経て仕事をする中で、人の命の重さってすごいなというふうに徐々に思い始めて、人の命を救うというか、助ける仕事に携わりたいなという思いが徐々に強くなりました。できれば働きながら医学部合格を目指せればいいなと思っていたんですけれども、そんなに甘くないなということが分かったので、1回辞めて受験に専念するという決断をしました。
(関) 奥様もいて、お子さんもいてというところで、相当な覚悟も必要だったかと思うんですけれども、奥様やご家族にお話をされた時の、お返事というかリアクションとか、どういうふうな感じだったとか覚えていらっしゃいますか。
(田中) 最初は勿論ですけれども、びっくりしていましたね。勿論反対していて、働きながらであればいいけれども、仕事を辞めてというのはだめだと言われました。だけど医学部受験はそんなに甘くないよという話をして、あとは仕事を辞めて一番不安なことは何かということを話し合って、その時に出てきたのはやっぱりお金の問題。子供がいるので、将来的に中学・高校と、しかも私立に行きたいという希望が本人にあったので、そのあたりがちゃんとできるのかというところが一番不安だと。だけどそこは今の資産の状態とか、今後生活費にどれぐらいかかるのかということを計算して、6年間通っても大丈夫だよというのを説明して、認めてもらうことができました。
(関) 多分奥様も色々な部分で覚悟を決めて、本当に家族総出での再チャレンジだったのではないかと思います。田中さんの場合は、一度大学を出られたかと思うんですけれども、一番最初に行った大学を受けた時、どのように進路を決めたんですか。高校生の時とか、最初の大学の時に、どんな学生だったかというのを、教えていただけますか。
(田中) 最初の大学を選んだ動機は正直不純で、僕は田舎が富山なんですけれども、東京に出てきたいというのが一番大きかったですね。
(関) 首都圏に出てくることが目的で大学を選択していた方は、周りのお友達でも結構多かったですか。
(田中) 結構多いですね。東京の大学に進学をする人は、東京に行きたいというのが動機の人が結構多かったなと思います。それ以外にも、自分はこういうことをやりたいから、この学校に行くんだという、ちゃんと目的意識を持って行っている人も勿論いましたけどね。今だったら、仕事体験のイベントとかで、こういう仕事があるというのを知ることができたり、そういうのを高校でやってくれたりするところもあると思うんですけど、僕の時はそういう情報って自分で調べない限り一切入ってこなくて、進路指導が充実していなかったということもあるかもしれないですね。
(関) 最初に大学に入学された時は、何を専攻されていたんですか。
(田中) 化学工学を専攻していて、プラントエンジニアリングの研究をやるような学科でした。あんまり興味はなかったです。
(関) 国立の大学ですし、並大抵の努力では入れない大学だったと思いますが、そこを目指そうと思ったのは、やはり関東に出てくるからこそ費用的な面も考えてのことだったんですか。
(田中) おっしゃる通りなんですけど、実は本当は東大に行きたいと思っていたんです。その理由は、東大に入れば最初は特定の学部に所属するというのではなくて、理科Ⅰ類とかⅡ類というふうにざっくりとした感じで入れて、1~2年間かけて自分の行きたい進路を決めていくことができるので、それが一番いいかなと思って東大を狙っていたんですけれども、残念ながら行けなくて。じゃあ、その次ということで東工大に入ったというのが正直なところです。うちの両親からも、東京に行くんだったらできれば国立、そしてしっかりと自分を磨くことができる大学に行きなさいみたいなことはずっと言われていて、東工大だったらいいよということだったので。
(関) 高校生の頃は、どんな学生でしたか。
(田中) 高校は、2年の1学期が終わるまでは、真面目だったと思います。先生に言われたことをきちんとやる人間だったんですけど、高校2年から受験に至っては、要領のよい人間ですかね、一言で言うと。最小限の努力で、最大限の効果を出すにはどうしたらいいかというのを、常に考えるような人間だったと思います。
(関) それって何かきっかけがありますか。2年の途中まで真面目で、そこから効率を求めるようになるって、何かきっかけがないと、そんな風に変わらないと思うんですが。
(田中) 細かいところは覚えていないんですけど、真面目だけでは上手くいかなかったんだろうと思うんですよね。1年の後期から2年の前期は、言われたことを全部やろうとしていて、でもそれができなくなってきて、だけどテストとか課題とかは課されるわけで、じゃあそれにどう対処していくかというのを考えた時に、効率だというふうに考えたんだと思います。
(関) それは今回のこの受験でも、すごく大きく生かされたと思うんですけど。
(田中) 勿論ですね。本当に生かしました。
(関) 今回の受験において、沢山の塾の中から、一会塾に入ると決めたきっかけ、決め手がもしあれば、お伺いしてもいいですか。
(田中) 一番最初のきっかけは、近いからというところは勿論ありました。毎日通うわけですから、例えば通学に30分かかると、往復で1時間かかるし、それが半年とか1年とか積み重なっていくと、とてつもない時間がかかります。その時間を勉強にあてれば、もっといい成果が出るだろうというところもあって、近いということを重視しました。ただ、近ければいいかというとそうじゃなくて、やっぱり講師の方ですかね。
僕が予備校に求めるのは、さっきお話しした僕の志向とも合うんですけれども、効率よく目的を達成するために必要な情報が得られること。一会塾の講師の皆さんは優秀な方ばかりなので、医学部合格に必要な沢山の知識、情報の中から、これだけやれば医学部に合格できますというところを教えて下さって、そこが、一会塾を選んだ決め手です。
(関) 個別授業を基本として、集団授業も受講していただいていましたが、再受験をするにあたって、もともとのベースがゼロというところのスタートとは全く異なった形で、受験勉強をスタートされたわけですけれども、授業を受けて、成績とか学力的に上がったなと感じた科目と先生、あと、上がったという実感を持った時期がいつぐらいだったか、もし覚えていらっしゃれば、教えていただけますか。
(田中) 2人先生がいらっしゃって、1人は仲野先生ですね。個別を教えていただいて、上がったと感じたタイミングは2回あって、1回目は夏ですかね。
(数学科 仲野先生)
(関) 夏のどのあたりのタイミングだったか覚えていますか。前半あたり?
(田中) 前半ぐらいですかね。2回目は、もう本当に受験の直前ぐらいですかね。
(関) 基本的に予習が絶対必要な授業スタイルで、宿題もきっちり抑える先生で、教え方にも特徴があったと思うんですが、田中さんが先生から指導を受けた中で、すごく自分の勉強の仕方に合っているなと思った部分って具体的にありますか。
(田中) 勿論教え方のスタイルも素晴らしい先生だと思ったんですけど、それよりも、宿題とか予習・復習で出していただく問題が、結構量は多いんですけど、問題のストーリーが明確になっているところが良かったです。例えば問題が1番から20番まであると、1番でこれを教えて、2番でこれを教えて、3番でこれを教えてって、簡単な問題から徐々に難しくなって、しかもそれぞれの問題で身に付けるべき知識を全部使わないと、最後の方は解けないような構造になっていたんです。
しかもそれが、医学部に合格するための必要最小限に絞っていただいていたので、基本的にはそれさえやれば合格できるというのが見えて、非常にやりやすかったです。やっぱり数学は特に問題集も多いので、結構つまみ食いしがちになっちゃうと思うんですね。そうすると、やってもやっても定着しないというか、多分伸び悩む原因にもなると思うんですけど、そういう意味で、これさえやればいけますよというところを早い段階で示していただいたことは、とても助けになりました。
(関) 復習や演習の教材は、かなり絞ってやっていましたよね。
(田中) はい。基本的には数Ⅲを仲野先生に教えてもらったんですけど、数Ⅲでは本当に仲野先生に出された問題しか、基本はやっていないです。それをただ繰り返し、何度もやった感じですかね。それだけでたぶん十分。十分というのは、医学部で出される問題は全部解けますよというわけではなくて、合格ラインに達する上で必要最小限。
(関) もう1人の先生は。
(田中) 化学の川原先生です。川原先生も基本的には仲野先生と同じで、医学部受験で本当に必要な知識と解くべき問題、これを厳選して出して下さいました。
(化学科 川原先生)
(関) テキストを基に、問題を解き進めていったという形で。
(田中) そうなんです。川原先生と、あとは上原先生にも一部個別指導で出していただいていた問題があるので、基本的にはそれしか僕はやっていないんですよね。ただそれを繰り返して、問題を見た瞬間に解き方がバーっと出てきて、すぐ解答を進められるような訓練をずっとしていただけなんです。
(関) 入試が終わるまでに、どれぐらい繰り返し反復したかって覚えていらっしゃいますか。
(田中) 理論の方は、たぶん3回以上はやっていると思います。有機は川原先生の穴埋め式のやつがあるじゃないですか。あれはもう回数を覚えていないぐらいやりました。今でも本当にあのやり方はいいなと思って採用させてもらっています。
(関) 色々な勉強方法を試行錯誤したかと思うんですけれども、その中で是非これはやってみる価値があるよというお薦めの方法があれば、教えていただけますか。
(田中) 問題解答同時プリントを作る、ですかね。問題が左に載っていて、その解答が右に載っていて、それを何回も繰り返し見る。結構皆さん、やっていらっしゃる方が多いかもしれませんね。
(関) 見開きに問題と解答が一緒にあって一遍に見られるというのは、すごく効率がいいなと。
(田中) そうなんですよ。結構問題を解いていく人は多いと思うんですけど、すごく時間がかかっちゃうんですよね。でも僕はそれを教科書みたいに毎日読んでいました。化学とかでも、まず最初に理論で川原先生に出していただいた問題と解答を、わーっと最初に読む。1時間ぐらいかけて。それで全部終わらせて、また次の日も同じように、次の日も同じようにみたいに、結構な頻度でやっていたんですよね。
それを含めると3周どころじゃないんですけど、それをやっていくと、この問題が出てきたら、こういうふうに解けばいいんだなって、頭の中ですぐ出てくることになるので、それをやり始めてから結構伸びたと思います。でも残念ながらそれを始めたのはすごく遅くて11月ぐらいだったので、もうちょっと早くやり始めていれば良かったかなって思います。
(関) ここから2020年度の入試はラストスパートに突入していきますが、今年度の受験生たち、また来年以降チャレンジしていく受験生たちに向けて、こういうことをやっておくといいよとか、こういうことに気を付けた方がいいよとか、何かアドバイスがあればいただけますか。
(田中) 一番は講師の方を信じることですかね。参考書は色々あって、色々つまみ食いしたくなる気持ちはよく分かるんですけど、参考書って医学部だけじゃなくて、どの学部の生徒でも全部対応できる形で作られている分、余計な問題とか、解かなくても大丈夫という部分があると思います。その点講師の方が出してくれる問題は、例えば医学部だったら医学部に特化したもので、集団授業で色々な学部志望の生徒が受けている場合でも、先生にこの問題って医学部に合格する上で必要なのかとか、やるべきかどうかというのを常に聞くことができるので、効率的に勉強を進めることができます。
(関) 先生をいっぱい頼った方がいいなと、感じている部分はありますか。
(田中) そうですね。医学部合格に必要な情報、それに近いところの情報を持っているのは講師の方なので、これだけやりたいので教えてと言えば出してもらえますし、それでやる内容を凝縮して、それを何回も繰り返してやる。限られた時間の中ではそれもいいかなと思います。
(関) 分かりました。ありがとうございます。では、晴れて医学部生になられたわけですが、田中さんの医大の魅力的なところとか、これから医学部受験を考えている学生たちにお薦めできるところがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
(田中) うちの医大のいいところは、先生がものすごく親身になって学生のことを考えてくれている。先生と学生の距離が近いところが、いいところだなと思います。でも僕的には、ちょっと近すぎるなと思って、近すぎるというのは大変なんですよ、課題が(笑)。僕は本当にびっくりしました。
(関) リポート的な課題が多い。
(田中) リポートの課題も多いですし、課題の中身も結構難しいものが多いですし、通常授業だけではやっぱり理解できないことも出してくるので、この宿題はそうだろうと思うから補講しますという話がいきなり来て、6~7時間ぐらいずっと補講するんですよ、先生が。そういうのは非常にありがたい部分もあるけれども、本当にそこまで必要なのかと。今、1年生で一般教養をやっているので、おそらく国家試験には出ないところですね。だけど、将来的に役に立つかもしれないという分野について、先生はそれを専門的にされているので、ここまでは教えたいという気持ちでやってくれるんですけど、なかなかそこは難しいなと思いました。都内名門私立医科大学は親身だけれども、そういう意味で、入ったらめちゃくちゃ大変だと思います。
(関) 忍耐力がある方にお薦めですか。
(田中) 忍耐力がある方にはお薦めですよ。体育会だというふうに、みんな言っていますね。
(関) 分かりました。ありがとうございます。
(田中) ありがとうございました。