九州大学 共創学部 共創学科 朱詠而(しゅえいじ)さん ― 国立台湾師範大学付属高校出身
その他の合格大学(すべて外国人私費留学生枠 合格)
筑波大学 比較文化学類
東北大学 文学部
なぜ日本の大学を選ばれたのですか。
はい、進学先を決める時期に、「みんなと違うことがしたい」「違う風景を見てみたい」という思いから、私は日本に留学することを決めました。元々推理小説や日本の漫画が好きだったから、日本の文化にも興味がありました。何より同級生のみんながアメリカ留学やカナダ留学している中、私が日本に来て日本語を習得できたら、母国語のMandarin Chineseと英語の上に、日本語もプラスされるから、自分の強みになると思って、留学先は日本に決めました。
そんな中、EJU(日本留学試験)の勉強を自分でして、一度受験し、筑波大学に合格しました。しかし、自分の第一志望じゃないのと、ちゃんと勉強に力を入れなかったのもあって、進学するか、浪人するかがすごく迷いました。それを決めるときに、一日かけてメリットとデメリットを考え込んで、ノートに書いて分析しました。進学する主なメリットとして、すぐにいい大学に入れることが保証されます。デメリットは、同級生より一年遅れてしまうのと、同じ受験勉強の内容をもう一回やることがあげられました。そこで私が考えたのは、いい大学に入っても、勉強の習慣がないままでは、得られるものは少ないのではないか。そんな中途半端な状態より、自分に一年を与えて、「勉強の習慣を身につけること」を目標として、自分の第一志望に挑戦しようと考えました。
なるほど、日本にはたくさんの外国人用の語学学校もある中で、どうして日本の予備校である一会塾を選ばれたのですか?
私にとって、いかにこの一年を有意義に利用することがとても重要でありました。留学生として、語学学校に行く方が普通ですが、語学学校は周りに中国語を話す人も多いだろうから、日本語の環境ではないのが、大きなデメリットだと私は思いました。その上、勉強の習慣を身につけるには、語学学校より、塾が一番適しています。日本語の授業にうまくついていけるかどうかの心配もあって、先生にその場で質問できる少人数制のクラスで、ちゃんと難関校目指せるレベルの高い授業という条件で、いろんな塾に問い合わせした中で、一会塾が自分の中で一番理想的な環境でした。
台湾の高校での『課外活動』について教えてください。
高校は理系でしたが、さまざまな社会問題に興味を持っていたので、政治経済の先生に積極的に質問したり、放課後も歴史の先生といろんな問題を議論したりしました。そのほかに、2年生から生徒会の学生権利グループのリーダーを務めていました。普段は生徒たちの学校に改善してほしいところを多様な形式で募集して、それらをまとめて学校の担当教員に話に行く役割でした。イベントがある時は、例えば「教員と生徒の対話集会」の司会者として、準備段階から当日の運営、さらにイベント後の双方の意見調整まで、私が担当しました。また「民主ウィーク」というイベントでは、責任者として展示会と弁論会、講演会等を実施しました。その中での一番の出来事はおそらく、生徒代表を選ぶ際の「選挙法」を作成したことだと思います。高校の重大事項を議論する校務会議に参加したとき、先生が300人に対して生徒代表が4人しかない状況に、生徒の意見が伝わらないという問題を感じていました。その問題に対して、校務会議学生代表の増員とその選挙方法を書き上げて、いろんな先生を説得しに行って会議で通過し、それが現在の私の高校の選挙法になっています。
さすがですね!台湾の高校での部活動はいかがでしたか。
部活動としては高校での行事などで公演する「栄誉礼」クラブ(高校3年間在籍、練習は通常週3回、パフォーマンス直前は毎日)に参加し、二年から全体の動きの立案とその練習までディレクターという立場で部員のみんなを指導しました。
栄誉礼とは・・・ 国賓など国への訪問者,あるいは軍隊への公式の訪問・視察者に敬意を表するために行う軍隊による礼式の一つ。
忙しい高校生活でしたね、高校での学習習慣について教えてください。
上記のような状況でしたから、勉強に興味はあったものの、生徒会と部活両方とも忙しくて、勉強する時間はほとんどありませんでした。そうした高校での習慣をそのまま受け継いでいたので、一会塾に通塾する前は、毎日勉強する習慣が確立できておらず、計画をたてても勉強より他の事項を優先してしまう状況が多くありました。しかし、一会塾に入ったあとは毎日自習室に行くようになったし、友達の誘いで朝7時からカフェで勉強するなど、ようやく受験生っぽくなれた気がします。高校の時課外活動が多いのは良くないっていう人もいますが、私は全く後悔しませんでした。人生においていい経験になったし、入試の面接の時にも自分の個性を鮮明に示すことができたので、進学にも役に立ったと思います。しかし、ちゃんと課外活動から勉強に戻れるかどうかが一番肝心なところだと思います。
一会塾での受講科目を教えてください。
一瀬先生の数学と、渡辺先生の世界史と歴史総合と、長谷川先生の小論文や面接の指導を受けました。
『数学』について
一瀬先生の授業はとても楽しかったです。しっかり難しい数学をやっているのに、一回も退屈な授業がなくて、雰囲気が楽しくて気軽に質問できるクラスでした。毎週の小テストは個人的にすごく好きで、勉強に計画性のない私でも、みんなに負けたくないから、毎週の授業前に必ず小テストの勉強を終わらせるようにしていました。先生のテキストもすごく使いやすかったです。最初に先生がこのテキストあったら青チャートやらなくていいよって言われた時、こんな少ない問題数で大丈夫かと不安でしたので、チャートも先生のテキストもやっていましたが、テキストは本当に少ない問題数でいろんな種類をカヴァーしていることにだんだんと気づいて、試験前の三、四ヶ月からは先生のテキストのみで数学を勉強しました。
『世界史と歴史総合』について
渡辺先生は私が知っている人の中で、最も多聞(「博学」という意味)な方かもしれません。歴史においては何でも詳しくて、私のいろんな質問に対して全て詳しく教えてくれました。すごい熱意のある方で、いつも元気いっぱいで授業してくれるから、物語を聞く感じで受けられる歴史の授業がとても好きです!特に先生は地図を見て歴史を語るのが、個人的にすごく理解しやすいと思いました。地図を覚えたら複雑な戦争の背景だったり、民族の移動だったりもすぐ分かるようになりますし、地図的な勉強と結びつけられるので、地理の勉強にも役立ちます。世界史はEJU(日本留学試験)の総合科目のごく一部だけかもしれませんが、渡辺先生の授業は歴史、地理、政治及び日本の文化など総合的な教養を学べることができで、とても勉強になります。私は受験が終わっても趣味で歴史総合という授業を取り続けました。私がなぜ歴史総合を、特に留学生におすすめしたいのかは、世界史と日本史を結びつけるような教材だから、自分の知っている歴史をベースとして、同時代の日本について今までと違う視点で見ることができるからです。個人的に一番印象に残りましたのは第2次世界大戦の歴史で、今までほぼヨーロッパの方を重点的に勉強してきましたが、歴史総合の授業受けて、自分が生きるアジアで起こった太平洋戦争についても詳しく知ることができました。
『小論文と面接指導』について
語学学校に入っていなかったため、日本に来て初めて受けた日本語の授業が長谷川先生の授業でした。元々400字の作文も書けない私が、今こんなにも日本語の文章書けるようになったのは、本当に長谷川先生のおかけです。先生は私にそのまま答えを教えるのではなく、毎回時間をかけて私に考えさせてくれました。最初は難しくて、いい書き方ができなかったけど、先生は私が伝いたいことを理解してくれて、日本語的な言い回しをその都度丁寧に教えてくれました。私の日本語力がちょっとしかなくても、私のできた部分を褒めてくれて、それのおかけで何回も書き直しになっても、一度も「もう無理だ」みたいなネガティブの気持ちに、私はなりませんでした。授業が進んでいくにつれ、とても自分の成長を感じられました。面接の指導も、文化の違いによって中々表しづらい言葉でも、適切な日本語の表現を見つけてくれたおかげで入試の面接の時に、すらすらと流暢に話すことができました。
『EJU(日本留学試験)数学』について
EJUの数学は基本をマスターできてさえいれば、過去問で感覚を掴みやすいと思います。例外なく同じような形式で出題されるから、いかにそれに沿った考え方で問題を解くのかが個人的に大事だと思います。あと時間の余裕を多めに残した方がいいと思います。普段過去問解く時30分くらい時間余るくらいで練習していたのですが、試験の日にはほとんど余りませんでした。
『EJU(日本留学試験)総合科目』について
(※総合科目とは、日本留学試験独自の科目で、日本の高校で学習する「公民」(政治・経済が中心)、「地理」、「歴史」の各分野から総合的に出題され、各分野の基本的な知識と、与えられる題材・図表から読みとったり、考えたりする能力を測る科目です。)
総合科目はすごく範囲が広いから、全部深く勉強するのは時間的に難しいと思いますが、自分の好きな分野を日本の教科書でしっかりやるのがおすすめです。総合科目は全て社会に関わる内容なので、一個の分野を精通すれば、他の分野へ繋がる礎にもなります。私の場合、歴史に時間をかけてEJU範囲外の古代史の内容も詳しくやりましたが、それで全体の流れを掴むことができたので、簡単に近代の歴史を系統的に理解できました。また現代の日本史も興味があってやりましたから、五十五年体制などの政治の内容も自然とわかるようになります。
『EJU(日本留学試験)日本語』について
リスニングはレベル的にN1※よりは若干簡単な気もします。話し方も比較的にゆっくりで、普段から日本語を聞きなれていれば困ることはないと思います。自分はノートを取らず聞いて集中できるタイプが、逆のタイプも人もいるかと思うので、過去問で自分に合うやり方を見つけた方がいいと思います。
(※日本語能力試験にはN1、N2、N3、N4、N5の5つのレベルがあります。いちばんやさしいレベルがN5で、一番難しいレベルがN1です。)
読解問題に関しては、問題を一回全部読み終わってから問題を解くのが個人的にいいと思います。文章のポイントを理解せずに答えを探したら、問題の罠に落ちる場合が多いと思います。試験時間内で全部解き終わるのに困ることがあったら、普通の日本人がやる現代文を多めにやって、長文を読むことに慣れれば、EJUの問題はとても簡単に感じちゃうと思います。逆にEJUの問題だけだと、日本の大学の2次試験の日本語問題は難しく感じることもあると思います。
記述問題は先に字数を決めてから書いた方がいいと思います。個人的に50、150、150、100が一番書きやすいと感じます。第一段落に字数を使いすぎると、終わり方がどうしても雑になってしまうので、内容が薄く感じるかもしれません。逆に前の字数が少なめになってしまっても、第三段落で反例をもう一個あげればいい感じの字数になりますので、おすすめです。ちなみにトータル3回受けて、結果を受けた順に言うと40、35、50点でした。最後は長谷川先生の指導受けで、ちゃんと満点取りましたが、日本語勉強して1年くらいで普通に書けば40、変に難しい言葉やなれていない文法を使おうとしたら逆に35点に下がったりしたので、自分の能力の範囲内の言葉で書いた方がいいと思います。
EJUの入試本番ではいかがでしたか。
他の国の事情はそんなに詳しくないのですが、知り合いの台湾の留学生はみんな日本のEJUの試験がもっとも厳しいって言うので、試験に行く前はしっかりルールを読んだ方がいいです。
私はシャープペンシルを持って行ったら、まさかの鉛筆しか使ってはいけませんとなりました。試験始まる10分前に急いで試験場近くのコンビニに行って買い揃えましたが、他の受験生は品切れで買えられなかった方もいましたので、これだけは気をつけた方がいいです!
あとパスポートも持っていかなければいけません。私パスポートも忘れちゃったから、試験終わりに色々と手続きさせられて、大変でしたので、これも気をつけた方がいいです!
朱さんは日本の国立大学に3つも合格されています。面接試験についてはいかがでしたか。
筑波、九州、東北の面接に行きましたが、どの大学もとても楽しかったです。面接に緊張する人もいるかもしれませんが、私は人と話すのが元々好きで、いつも「面接は他人に一切気遣いせずに、自分の自慢話ができる唯一のチャンスだ」という気持ちで、できるだけポジティブに考えています。
面接の内容的には本当に長谷川先生に助けられました。元々準備していた内容は分かりにくいところもあれば、ちゃんと考えていなかったところもありました。長谷川先生に話している間に、将来自分は何をしたいか、何のために勉強したいかについて、より深く考えることができました。先生は内容をわかりやすくするが、「私の将来の目標」など、自分で決めなければいけないことに関しては、一回も口出すことがなく、ちゃんと私に考えさせました。未熟なところがあっても、すごく励ましてくれて、それも面接の自信に繋がったと思います。
筑波大学での面接試験について
筑波大では日本文化について聞かれました。日本文化にどんなイメージを持っていますかと聞かれて、「熱意を感じさせる文化で、イメージ的には必勝を書いたハチマキを巻いて頑張る人」で答えたら、自分も教授たちも笑っちゃって、そこから結構気軽に話せたと思います。去年と比べて勉強に関する話は少なめで、文化に関する個人の経験の方がメインでした。
九州大学での面接試験について
九州大は去年と同じ、半分日本語半分英語でした。私が受けた共創学部は本当に英語重視の学部で、カリキュラムに英語の割合が高くて、一年の留学が必要のプログラムだから、この学部を受けようと思ったら英語の勉強をしっかりしなければいけないと思います。日本語以外に英語もやるのは時間的に大変なところもありましたが、将来にもきっと役に立つという気持ちで、私は英語に多めな時間をかけました。また、総合的な学部だからこそ、「自分は何をしたい」をはっきり示さなければなりません。私は最初「理系も好きで文系も好きだからここいいな」という軽い気持ちで志望することを決めましたが、面接に行くってなると、やはり研究したいテーマと、学びたいことを具体的に考えなければいけません。ちなみに私は「環境問題における社会の意見の分断」について、その成り立ちと解消の方法を研究したいと考えました。
東北大学での面接試験について
東北大の面接は一番やりやすかったと思います。時間も比較的に短くて、終わった時に「え、もう!?」という気持ちでした。一人の先生は、若干厳しい顔をしていましたが、文化の違いの体験を話すときや、将来自分のしたいことを話すとき、すごく頷いてくれて、とても話しやすかったです。もう一人の先生は、日本語について褒めてくれたし、私なりの日本語の勉強の仕方について詳しく聞かれました。それで自分の好きな推理小説の話になって、もう面接っていうより、近所のおばさんと楽しくいろんな話をする感じでした。(言い方失礼かもしれませんが、本当にそのくらい親切でした。)
合格した瞬間の気持ちと、現在の心境などを教えてください。
本当に楽しい一年でした。もちろん一会塾にきたから、ストレスやプレッシャーを感じることもありましたし、留学生として、みんなと違う勉強をやるので、授業のテストと自分のカリキュラムが噛み合わなくて、大変な時もありました。それでも、来て良かったと思います。緊張感がない私にとって、そのプレッシャーが逆にいい刺激になったと思います。この一年世界史と数学をしっかりやって、「多分大丈夫だろうな」みたいな根拠のない自信が、知識が増えたことによって「自分には実力がある」のような自信に変わりました。抽象的かもしれませんが、受験生だったら多くの人は私と同じく、「まだ全然ダメだけど行けるんじゃない」から「今の私ならいける」に自分が変化していく体験をしているのではないかと思います。こんな私でも合格できたのですから、勉強を始めたばかりの人にも、ぜひ自分を信じてやり抜けてくださいと私は伝えたいです。
外国人として日本に引っ越して勉強される上での苦労について教えてください。
最初は台湾の友達から離れて暮らしてとても寂しかったのですが、一会塾のスタッフさん(星さん)が探してくれた学生マンションで、すぐ友達ができました。ここは一会塾からも近くて、Temple大学の学生寮でもあったので、比較的に外国人が多くて、みんなフレンドリーでとても暮らしやすかったです!それで大学生たちと一緒に自習室で勉強したり、ランニングに行ったり、ご飯作ったりしました。自分が勉強する習慣を持つと、自然と勉強する人と友達になるから、一緒に勉強してくれる友達が欲しかったら、まずは自分から進んで勉強を始めないといけないと思いながら頑張りました。
これからの受験する人へのアドバイスはありますか
受験上のアドバイスでいうなら、「みんなとのペースが違っても大丈夫」だと言うことです。他の人の意見より、自分の勉強の仕方を見つけて、それを実践した方がいいと思います。私は勉強を一日10時間やるより、5時間ひたすら頑張るようなやり方の方が合っていることに気づいて、無理やり自分を机の前に座らせることをやめました。しかし、勉強の習慣が途絶えないように、やる気が出ないときは1時間だけでも必ず毎日勉強することだけ、心かけました。
そして、誰でも失敗は何度か経験するものだと思いますが、それを失敗として捉えるか、転機として捉えるかは自分によると思います。一年浪人したことはもちろん失敗と言ったら失敗ではあるけれど、私にとってこの一年は実力を伸ばした充実した1年でしたし、学生マンションで大切な友達たちと出会った、人生においてとても大事な一年でした。皆さんも自分の夢の実現に向けて前へ進んでください!
Last but not least, choose what you love, and love what you choose!
(「最後になりますが、好きなものを選び、そして選んだものを大好きになってください!」編集者による私訳)